「学長のリーダーシップとその能力養成」 (名古屋高等教育研究 第19 号、両角亜希子、2019)を読んでみました。
名古屋大学高等教育研究センターのサイトからダウンロードできます。
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no19/11.pdf
(リンクは2019年9月10日現在のものです。)
この論文は、優秀な学長が何を重視し、どのような形でリーダーシップを発揮し、どのように育ってきたのかを、11名の学長へのインタビュー調査から明らかにしようと書かれたものです。
その中で、学長たちの発言の共通点として、リーダーシップ研究の古とされるPM理論が紹介されています。
PM理論
「組織目標を達成するP(Performance function)機能」と「人間関係に配慮し集団を維持しようとするM(Maintenancefunction)機能」の2 つの能力要素が示され、PM 両方の機能を持ちあわせるのが優れたリーダーである。
著者は学長におけるPM理論を次のように引用しまとめています。
「M機能、教職員の理解や協力を引き出す工夫といえるのかもしれないが、『自分の考えを正確にわかりやすく伝える能力』、『教職員と丁寧に、真剣に話を聞くこと・誠実さ』、『データでの説得・エビデンスの重要性』などが語られた。
もう一つは、P機能で、ビジョンや目標を示す、『優れた提案力』、『やると決めたらやり抜く強い覚悟・ぶれないことの大切さ』、『理念や大きな方向を示して、賛同を得ておく』、『他の執行部との関係づくり』、『教職協働・職員の経営参画の重要さ』などである。」
M機能については、多くの学長が『教職員と丁寧に、真剣に話を聞くこと』、『誠実さ』、『公平さ』を指摘したそうです。
また、学長の育成方法について、
「学者出身学長の場合は、学内役職経験の効果が大きいが、それだけでなく、機会を作って勉強している点も明らかになった。」
「学者経験のない学長の場合は一定の苦労はあるが、それぞれの持ち経験で 補っていた。」
著者は、学長たちが「学長には一定の資質やマネジメント能力は必要」と述べたことを示したうえで、「優秀な学長たちがそれぞれの機会をとらえて勉強していたことは非常に重要」と記しています。
学長のリーダーシップは個人の資質だけではなく、個人と組織の勉強・努力により養成されるものであることを学びました。