第三回大学再編を考えるシンポジウム「大学は誰のもの?~静岡大学再編問題から考える~」が2019年11月2日(日)に 静岡県産業経済会館で開催されました。静岡ダービーや大道芸ワールドカップと重なっていたにもかかわらず、100名近くの方にご参加いただきました。

田原博人宇都宮大学元学長から、大学ガバナンスと学長のリーダーシップの確立の経緯について紹介がありました。静岡大学の再編問題の自己矛盾、そして今必要なのは浜松地区との連携強化を進めることではないかと指摘されました。

田島慶吾静岡大学人文社会科学部副学部長から、「大学ガバナンス」論出現の背景について紹介され、静岡大学再編問題を事例とした場合の問題点について指摘されました。
また静岡大学農学部同窓会の中村元弘氏からは「静岡大学の統合再編分離問題に関する農学部同窓会の見解」特別決議や農学部移転問題の経緯について紹介されました。
パネリストによる発表のあとに、会場から意見・質問がありました。
誰が(大学再編に)賛成してるのですか?
石井学長の解任はできますか?
学長リコールのステップについて詳しく聞きたい。特に教職員、学生その他に権限はありますか?
まず、2018年6月の申請問題とそこに至る経緯がブラックボックスすぎて、よくわからないという印象を持っている
静岡には静岡大学が必要ではないのですか? 静岡県の若者の県外流出の歯止めにも静岡大学は役だっていると思うのですが。静岡市に静岡大学は絶対必要だと思います。
学長は統合のデメリットは存在しないとテレビでハッキリいいましたが、デメリットが出たら責任をとれるのでしょうか?
学長ブログで最近東部キャンパスがサボっているからこうなったと何回も書いていますが、本当に静岡大学の学長の発言でしょうか?
職務怠慢で辞職して欲しいです。学長の資格はないと思います。
早くまともな大学に戻って欲しいです。
田島氏及び田原氏にお伺いしたいのですが、この統合再編問題に学生はどう向き合うべきだとお考えですか?
田島氏及び田原氏にお伺いしたいのですが、この統合再編問題に学生はどう向き合うべきだとお考えですか?
大学の再編の問題点、特に「一法人二大学」にする必要があるのかについて、これまで多くの教員はじめ様々な方々が訴えてきました。それにもかかわらず学長には「のれんに腕押し」状態で、全く伝わらない。誠意をもって応えて頂けないことへのやるせなさや無力感は、田原先生や田島先生のお話を伺って「大学ガバナンス問題」が深くあることのためだと腑に落ちました。「学長の権限の抑制」の部分が欠落しているということが問題だと思いました。これが顕著に表れている現学長は、現学長の個人の資質によるものなのか、それとも誰が学長になっても今の体制のもとではこのようになってしまうのでしょうか?
卒業生だが、私たちはステークホルダーにあたるのか?単純に母校が分裂するのは嫌だなという気持ちは自分、友人にはあるが、じゃあどうしたらいいのか? 問題の本質はどこにあるのか、やはりよく分からないので「そっか」で話が終わってしまう。また、特に卒業生に連絡が来ていないが、人数を集めるには声をかけてもいいのでは?
県外出身なので、駿河・遠州という分け方があるが、文化の違い、確執についてしっくりこないし、今の時代、そこまで文化の違いはあるのか? そこを分離の理由にするにはナンセンスだと思うが如何でしょうか? また違いを強調するのではなく、融和に向かう方が多様性を認めるという現在の風潮に合っているのではないかと思う。
文理を分けるのはナンセンスだと思う。
統合・再編も問題だが、そもそも静岡大学がどうあるべきかがわからない。皆さんは、大学がどんな姿になればよいと考えているのか、何を目指したらいいのか、そのことが示されないと、統合再編の是非を判断できない。大学当局も、教員の皆さんも、地域住民もよく考えるべきではないか。
仮に静岡大学が分離し、もしなくなることがあれば、経済的に大学に行けないという人も出てくるのではないか。もっと中高生、教員にもアピールしていいと思う。
静岡市中東部の世論の喚起はどのようにしていますか?
もし再編されてしまった場合、その後の静岡大学の発展構想はどのように考えておられますか?
文科省と国会への働きかけは?
静岡大学が進めている「大学分割のための法人統合」が結論ありきで進んでいる姿は、昨日見送りとなった「大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入」と同じです。柴山前文科大臣は「サイレントマジョリティーは(民間試験の導入に)賛成です」とツィートしていました。浜医大との統合・大学再編も、両大学は柴山前大臣と同様反対意見が聞こえなければ、大方皆賛成していると錯覚しているかもしれません。今回採択された文科省の国立大学改革強化推進補助金ですが、「現在の静大が結果的にかえって特徴のない大学になってしまうのではないか懸念がある」との指摘を受けています。統合・再編のデメリットが見えないとおっしゃる石井学長に、文科省も懸念を抱いているのです。今こうした状況下で、民間試験導入に反対した高校生・高校関係者などのように、大きな反対・再考を促す波を起こすためにはどうしたらいいか、早急に考え、手を打つべきだと思います。考えられる方策はあるのでしょうか?
「意見のかみ合わせが難しい静岡大学石井学長との議論の進め方について、三点の再編プロセスの不備への私見。
①執行部の多くがステークホルダーの意見に耳を傾けないまま主体性を保持したことに、そうでなければ執行部の存在価値がないという誤った考え方を学長自身が持っていること。
②文科省の「第4期中期目標期間」の計画締め切りが迫ったことで、短期間かつ少ない周知でプロセスが進み、僅か1票差で2地区の新大学再編の合意となったこと。つまり、通常通りステークホルダーと十分な議論を経た上で執行部が投票を行えば、2地区の新大学再編案は否決される見込みが十分あったのではないか。
③合意に対する学長の説明責任が果たせていないこと。先日の学生との対話集会でもこれまでと同様、言葉が定性的に隔たっており、学長の曖昧でかみ合わない返答に質問した学生のほとんどが納得できずもやもやしていた。この場合、経営学視点で定性・定量、双方の視点を織り交ぜながら説得力のある説明をするのが適切ではないでしょうか。
静岡大学に似たスケールメリットの規模を持つ東海国立大学機構の岐阜大学の学長は、少子化時代でも質の高い学生を維持する為、地方国立大のトップを目指しブランド力を向上させるとして、大学世界ランキング400位内、国内では北大・九州大・筑波大相当の地位を目指すと公言しています。それに比べて静岡大学の石井学長は、上で挙げた3点の不備を含め、少子化時代の大学経営の基本を無視し、さらに静岡大学の衰退化に対する危機意識も感じられません。経済学科出身の私には、静岡大学石井学長の経営能力は相当乏しいか、または経営学を超えた特殊なビジョンをもっているかのようです。今後意見の噛み合わせが難しい静岡大学の石井学長とどのように議論を進めていくのでしょうか?
富樫幸一氏 (岐阜大学地域科学部) からのコメント
東海国立大学機構は、2020年4月に発足します(静大でも法改正が必要です)。ようやく10月に機構長予定者として名大の松尾総長が文科大臣から指名され(学長です)、岐阜大学の森脇現学長が大学統括理事(学校教育法の「学長」)として指名されました。
新しい法人になることはともかく岐大としての学長選考会議・意向投票なしでの決定です。
財務的予算的には名大・岐大の単位はそのままです(I類型、III類型)。運営・規則の変更はまだ間に合っていません。統合によるメリットも具体的には示されていません。静大では? 就業規則(組合)、非常勤なども分からないままです。 教育学部の学生定員の削減(30人)、学部棟連携教育課程(単位プログラム)の「経営プログラム」案は、学内・文科省(内規等が未整備)とも不確定のままです。